炎の力を無理なまでに利用して、公衆浴場にいつでも熱い湯が出るようにした。

水の力を無理なまでに利用して、上下水道を整備させたうえ、街に水路を張り巡らせ、船を浮かべて交通手段とした。

各家庭に一匹は妖精を置き、炊事、洗濯、掃除に至るまですべての雑用をさせるようにした。

ガレー船の漕ぎ手として、無数の妖精を無理やり船底で働かせた。

このように、いつしか妖精は奴隷となっていったのだった…。

「バリバウスは元老院議員の中でも最強の反妖精派で、あいつが妖精に少しでも有利な意見ならそのすべてを握りつぶして、陛下に上奏できないようにしているんだ。
バリバウスを辞任させられれば、世界が変わるチャンスが生まれる。
あたしが長年つくってきた案も提出できる。
あなたみたいに強くて優しい人が後任になれば最高! 
あたしは世界を変えてみせる。
北の王国ケレアシアのように、人間の頭脳で上下水道は整備できるし、公衆浴場も高給を出して交代で火を炊けばできないことじゃない。船なんてなくても、自分の足を使えばいい。小さな船なら漕げばいいしね。奴隷なんて、いらないんだよ。また友達に、戻れるんだよ」

「…だから?」

シルフィの熱弁を、冷たい声がぴしゃりと冷ます。

中央妖精大学校の回廊を並んで歩く、テフィオの声である。