この学校にはふたつの広い運動場がある。

ひとつは主棟の正面に、もうひとつは主棟の裏手にあり、双方に護衛の兵たちが配属されているはずだった。

シルフィたちは彼らに身を守ってもらうため、一番近い裏手の運動場に向かって走った。

しかしその判断は間違っていたかもしれない。運動場についてみれば、そこはまさに戦場と化していたのだから。

怒号が飛び、血しぶきが舞う。

金の軌跡が縦横に視界を埋め尽くす。

十数名の護衛兵たちと賊が、刃と刃をぶつけあっている。

どうやら賊の数の方が多く、護衛たちに不利だ。

シルフィの目の前で一匹、妖精が賊にさらわれた。いや、一匹ではない。手の空いた賊が、あちこちで妖精をさらっていっている。

「妖精たちがさらわれてる!? どうして先生たち、助けないの? 戦わないの!?」

『シルフィ、あれを見て!』

プチが指し示したのは運動場の一角だった。そこに気剣を構えた教師たちが固まっていたのだ。その中心には白髪の男がいた。

『みんなバリバウスを守っているみたい』

「今は一人を守っている場合じゃないのに! あっ! プチ、シャドウ、この妖精さんをお願い!」

シルフィは不意に腕の中の妖精をプチとシャドウに預けると、戦場へと飛び出して行った。

『シルフィ!? どうするの!?』