シルフィたちは急いで先程のぼろ教室に戻ってみた。

するとそこには、変わらぬ様子で椅子の上に無表情の妖精が座っているではないか。体も汚れていないし、額の模様も間違いない。

「同じ妖精さんが…二匹? どういうこと?」

シルフィとプチが首を捻っていると、不意にシャドウがくるりと身を翻した。

「えっシャドウ? どこ行くの?」

シャドウが去り、ほどなくして、何やらあたりが騒がしくなってくる。悲鳴、怒声、そして…剣戟の音だ。

『どうしたんだろう』

不穏だ。

二人も様子を見に行こうとしたところで、シャドウが帰ってきた。その表情は険しく、珍しいことに二人に声を送った。

『事件だ。門を破って賊が侵入した。もうすぐここにもやってくる』

まだ人間には何の物音も感じられないうちに事件を察したシャドウの耳はさすがだった。

「賊!? 大変! 妖精さんも逃げよう!」

シルフィは迷わず椅子の上の妖精を抱き上げた。妖精はそうされても微動だにせず、虚空をみつめたままだ。

「護衛の兵たちがいるところまで逃げよう」

三人は視線をかわし、頷き合った。