もうお気づきだろうが、シルフィは、中央妖精大学校の掃除婦の一人になった。

どうしてシルフィのようなよく言えば天真爛漫、悪く言えば破天荒な娘が掃除婦になれたのか。それには様々な事情が関係している。

１０００年近い歴史を持つこの学校は、元をたどればアンティストが開いた青空教室なのだそうだ。それが長い年月をかけて屋根が付き、建物ができ、増改築を繰り返して、今のような規模になった。議事堂よりも大きさで言えば大きく、神殿に匹敵するほどである。

７０クラスもの教室を擁する左右の棟に、食堂や職員室を擁する主棟、壮麗な前庭や裏庭のあずまや、教師宿舎などの広大な敷地内の建物すべてを、掃除婦たちはたった３０人でいつもぴかぴかに掃除しなければならなかった。

これはこの時代の女性の仕事の中ではきつい部類にあたるため、それだけで志願者は絞られる。

農民の、あまり働き手とならない若い女性たちが出稼ぎとしてくるのがほとんどだ。

それゆえか、教師たちは掃除婦を見下し、口を利くのも汚らわしいと思っている。

貴族の娘が採用されるエリート職“事務”の女たちからもひどく差別され、その上教師たちへの給料を高くするために経費を削減しており、給料まで雀の涙なのだ。

このような事情から志願者が定員割れしていたため、シルフィが採用されるに至ったのだった。

「さあ、道具を持って持ち場に移動しなさい！」

一斉に掃除婦たちが散り散りになる。