しかし事件はまだ終わってはいなかった。植物には根が残っているために、数日すると再び元通りに再生してしまったのだ。

村を救うため、アンティストは西の聖なる森へ旅立った。そこは父神の加護あつい場所ゆえ新たな知恵や力を授かることができると思ったのだ。

アンティストは森に分け入り一心に祈ったが、ジュピテリオスからの応えはなかった。

力を使い息子を宿らせたために、父は長い眠りの時期に入ってしまっていたからだった。

それとわからず祈り続け、森で迎えた七日目の夜、アンティストは怪我をした青い狼に出会う。

強風の晩であったから、とんできた太い木の枝が腹に刺さってしまっていたのだ。

アンティストは枝を抜き、水で傷口を洗い、薬草をもみこみ、光の力でつくった布で傷口をおおって、しっかりと手当てをした。狼はそのまま森の奥へと去って行った。

アンティストが森にこもって20日目の晩に、二人は思わぬ形で再会を果たす。

冬を迎えた森で凍えて死にかけていたアンティストを、今度は狼の方が助けに現れたのだった。

狼は分厚い毛皮で彼を包んだだけでなく、なんと不思議な力で何もないところから炎を生み出し彼を温めた。それは薪がなくとも燃える炎、強い力を秘めた炎であった。

「その炎の力で、私の村を助けてくれないか」

アンティストが頼むと、

「命の恩人の頼み、喜んで引き受けよう」

と狼が人語を喋った。狼は自らを“妖精王(ファンタジェリスタ)”と名乗り、仲間たちを紹介した。

レッサーパンダによく似た赤い毛皮の生物たちは、妖精王の命で村を救う手助けをしてくれることとなった。

妖精たちは雄が炎、雌が水の力を操れるときき、アンティストは炎で植物を燃やし、水で燃えカスを残らず洗い流してくれるよう頼んだ。