テフィオとファイツは、シルフィの亡骸を見たのだ。亡骸は棺に入れて、海に流したはず。

「も~、そんな亡霊を見たような顔しないでよね。まあ、亡霊みたいなものかな。あの時確かにあたし、死んでたし」

シルフィはいたずらっぽい瞳で語った。

「でも、妖精王様とアンティスト様が、またしても私を救ってくださったの。魂を呼び戻して…肉体を再構築して…使命をまた授かっちゃった。この世界のこれからを、見守るようにって。もう普通の人間じゃないから、寿命が何年あるかもわからないんだけど、多分普通の人よりはだいぶ長いと思うよ。だからこれからはずっと一緒にいられるね!」

「…………」

何も言えないテフィオの隣で、ファイツが上ずった声を出す。

「じゃあ、じゃあ、なんで三年も会いに来てくれなかったんだよ! 僕たちがどれだけ悲しんだと―」

「三年? へ? 私がアンティスト様たちの所を出てきたのは一週間前なんだけど―ああ、もしかして」

シルフィは悪びれずに続けた。

「時の流れが、違うのかも。二人と一緒にいた二人の空間では、やけに髪が伸びるのが早かったから、ふしぎだな~なんて思っていたんだけど」

ファイツが脱力したのが、隣にいたテフィオにもわかった。

テフィオも脱力したくなったが、今はそれよりも大事なことがある。

「シルフィ…本当に、シルフィなんだな」

テフィオがよろめきながら手を伸ばし、シルフィの頬にそっと触れる。

触れ合うぬくもり。

血が通っている証だ。

そしてそう感じた瞬間、それが合図か何かであったかのように、テフィオは激しくシルフィをかき抱いた。