「結局アンティストと妖精王は戻ってこなかったな」

滅亡の日より三年の月日が流れていた。

ファイツとテフィオは石造りの校舎に生まれ変わった妖精大学校の“プティの風の丘”に来ていた。

この丘や芝はまったく被害を受けず、きれいなまま残っていた。三年の月日を経て、芝草はより輝きを増している。
ここは静かだった。

風と木と草と、二人しかいない。

「いつか戻ってくると思う? テフィオ先生」

「いつ戻ってきても…もう大丈夫さ。シルフィは約束を果たしたんだから」

“シルフィ”―。

その名に、二人の瞳が同時にかげった。

愛しい少女を喪ってから、もう三年にもなるらしい。

いまだに悲しみが癒えることは無く、二人の心に時折強い痛みをもたらす。

こうして二人並んでさわさわと風に揺れる芝草を見おろしていると、否が応でも彼女の声と姿が蘇ってくる。

二年前、月桂樹のそばに植えたプティの樹が大きく育ち、今、花の散る美しい季節を迎えているから、なおさらだろう。

二人の前を舞い散っていく、赤と金の花びら。

『きっとね、今年こそは飛ぶんだ』

明るい笑顔。

絆を信じる強い瞳。

自分たちが喪ったものは、あまりにも大きい―…。