暗陽節での出来事を経て、人々と妖精は協力して街の再建を始めた。

アンティストたちの力なのか暗陽節の力なのかはわからないが、妖精たちはもとの気のいらない体質に戻り、人間たちは気の力を失っていたため、石や木を用いての、本当に一からの街づくりだった。

むろん、いがみ合いや衝突がまったくなくなったわけではない。

それでも今までとは違い、支配し支配される関係ではないため、会話が成り立つ。会話が成り立てば、自然といがみ合いや衝突は解消されていくものだ。

そんな当たり前の“友人関係”が、あちこちで見られるようになった。

人間と妖精の間だけでなく、人間同士の間でも。

気の上下関係でがんじがらめだった人々の心は力を失ったことでほぐれ、肉親や友を愛する、思いやる気持ちを抱くようになっていった。

世界は絆を取り戻しつつあるのだ。

それを先導したのが、テフィオリウス皇子と妖精ファイツだった。

伝説のアンティストと妖精王の再来とされ、二人を人間と妖精の絆の象徴として敬い、皆が従った。

王室や元老院はそれを受けて、テフィオを新たな皇子(ディウエス)にと推したが、テフィオは頷かなかった。

「妖精先生として生きたいから」と彼は言った。

国王ヴェネウェンティウムと皇子(ディウエス)セクスティウスを陰で支えながら、テフィオは妖精先生として教鞭をとり、人々や妖精たちに、大切な絆を説いていった。

むろん弱体化した帝国を狙う他国の侵略もあったが、新たに鉄の武器を手にした人々と妖精たちの炎の力で協力して、なんとか食い止めることができた。

友情と愛情に満ちた確かな国づくりがなされていき、今度こそ人間と妖精の楽園がつくられるであろう、そんな予感をさせる日々が過ぎた。