ファイツが腕を上げると金色の炎がへびのようにくねり、城壁の上の兵士を一人飲みこもうとした。

しかしそれを、隣の兵士がかばって前に飛び出した。

彼は、弓矢でシルフィを射抜いた張本人であった…。

リーダー妖精が言葉をなくした。

「人間は確かに心弱く、時に過ちを犯す。
しかし信じるならば、彼らの中にある光を信じ引き出すならば、そこに希望を見出せる。わたしはそう思うのだ。
この少女に…そして彼に、そう、教わった」

彼、と示されたテフィオは、穏やかな声で懇願した。

「罪は罪だ。むろん罰される。だがどうか滅ぼさずに…人間をもう少し、信じてやってくれないか。チャンスを与えてやってくれないか」

妖精たちの中にざわめきが広がり、やがて彼らの瞳から好戦的な色が消えて行った。

そして誰からともなくこうべを垂れた。

「妖精王様とアンティスト様が、そう、おっしゃるならば…」

テフィオたちから見えることは無かったが、帝都内で暴れていた妖精たちも皆、二人の方角を向いてこうべを垂れていた。

妖精たちの反乱が…収まったのだ。

テフィオはくるりと向きを変えると、人間たちのひしめく帝都を見上げて声を張り上げた。

「人間たちよ。
己が犯した罪の大きさはわかっていよう。
ここに、アンティストより罰を与える」

人間たちが息をのんだ。

「死して償えと言いたいところだが…
もっと重い罰としよう。よいか。
そなたたちは皆、これから妖精を友とし、気に頼らぬ街をまた一からつくりあげるのだ。いつか命尽きるその日まで、懸命に――生きて償え! よいな」

人間たちに否やはなかった。

命を救われただけでもかなりの恩情だとわかっていたのだ。

それほどに自分たちが罪深いことを、本当は皆わかっていたのだろう。

彼らはただ地に頭をこすりつけるようにしてひれ伏し、「ははーっ」と皆が皆了承の意を示した。