「伝令―――! 大変だ!街の外からこのジュピテリオスに、何十万もの妖精の大群が押し寄せてきた! もう、もう、終わりだ!!」

その知らせに、広場の人間たちは半狂乱になった。

「いやだ、死にたくない!」

「うああ、どうすればいいんだ!」

シルフィの顔からすっと笑みが消え、視線が鋭くなった。

そしてその瞳に、炎のごとく強い意思が浮かんだ。

奴隷社会を変えるために来たと、テフィオに宣言した時の、いつかと同じ強い瞳。

「…止めなきゃ」

「え?」

「妖精たちを止めなきゃ。この国のみんなを、守らなきゃ!」

「お前、こんな状況でまだそんなことを言って―」

「あたしは諦めない!!」

シルフィは叫ぶと、脱兎のごとく駆け出した。

たった今まで石で打たれていたぼろぼろの体で、どこへ行くというのか。

「シルフィ―――!!」

テフィオとファイツは、目を見合わせた。

それだけで通ずるものがあった。

仇だとか、互いを殺すだとか、そんなことは今はどうでもよかった。

二人は互いの中に、同じ想いを見出したのだ。

“シルフィを、守りたい”―――と。

言葉もなく、テフィオはファイツを抱き上げ、肩の上に乗せた。

そして、

「行くぞファイツ!」

と一声かけると同時に走り出す。

ファイツは頷き、まっすぐにシルフィの背中をみつめながら、振り落とされぬようしっかりとテフィオにしがみついた。