「忌み子が生きていたのが悪いんだ! コイツさえ殺せばいい!」

「そうだそうだ!」

シルフィたちを取り囲む人間たちの目は血走り、完全に、正常な判断力を失くしている。

まさしく狂気の渦。

テフィオの中にはらわたがちりちりと焼け焦げるような怒りがわき起こった。

シルフィが誰のために必死になって努力してきたか。知りもせず、こともあろうにすべてをシルフィのせいにしようなどと…!!

人間はなんと弱く、醜いのだろう!

「打ち殺せ!!」

人々は巨大瓦礫を手にしてシルフィににじり寄った。

あんなものの直撃を受けたら、ひとたまりもない。

しかしテフィオは迷っていた。

自分だって彼らと同じだ。自分のことだけを考えて、彼女を傷つけた。

そんな自分に、彼女を救おうとする資格があるのだろうか。

その時、小さな人影が駆けてきて、テフィオに飛びついた。

「テフィオお兄ちゃん!!」

それはあの、バリバウスの実子、リコリウスだった。

煤だらけのぼろぼろの姿だが、この騒乱のなかを生き抜いてくれていたらしい。

「リコリウス―無事だったのか」

「お願い! シルフィお姉ちゃんを助けて! 父様は死んだ…それだけのことをしてきたんだ。でもお姉ちゃんは違う! 助けて…助けてあげて!」

何か透明なものがリコリウスの目から溢れて煤だらけの頬を伝った。

あまりにも美しい、涙。

テフィオは絶句した。

気付いたのだ。

絆(プティ)に―――この時、はじめて。

プチ、シャドウ、リコリウス―シルフィの周りには、いつも、いつも、いつも、絆があったではないか。見て見ぬふりをしてきたのはほかならぬ自分だ。

あのファイツですら、憎まれ口を叩きながらもシルフィを慕っていた。そう、慕っていたのだ。間違いない。

そして、自分と彼女の間にも…。

彼女の純粋な想い。

それを、自分はどうした―――!?