彼の頭を占めているのは、妖精の反乱のことでも、建物の崩落のことでもなかった。

シルフィとファイツが見せた涙が、頭を離れなかった。

泣かせたのは自分だ。

そのことが胸に痛みを生む。鋭い痛みを。

まるでじくじくと痛むやけどのようだ。

テフィオにはわかっていた。

もう、遅すぎるのだと。

全ては崩落し、罪深い人間は…滅びるのだと。自分も含めて。

死ぬ…それもいいかもしれない。

そうすればもう、手に入らぬラダメシスを求めて苦悩することもなくなるではないか。

もう何も見たくないし、聞きたくない。

「シルフィ…ファイツ…」

もう二度と、会えないのだろうか。

こんな時なぜ二人の顔が浮かんでくるのか、テフィオにはいまだにわからなかった。

滲む視界を、熱気のせいにして、テフィオは膝を抱え込んだ。