一方テフィオは、大混乱の帝都ジュピテリオスを、皇宮めがけて駆けていた。

建物の崩落を避けるように、広場(フォロ)には大勢の人がひしめきあっている。それを狙って妖精たちが火を吹く。

優秀な奴隷の豪炎は、数秒で人を丸ごと焼き尽くしてしまう凄まじいものだ。気のシールドがなければ、妖精にとって人間など赤子にも等しい。

テフィオにも妖精が向かってきたが、うまく炎を避け、木剣の技で応戦することができた。皮肉な話だ。気でできていない武器を持っていることが、役に立つ日が来るなんて。

人並みをかきわけやっとのことでたどりついた皇宮は……

入り口が崩壊し、中に踏み込めない状態だった。

陛下は…無事であろうか。

確か倉に木製の練習用弓矢が置いてあったはずだ。

それで皆応戦できるかもしれない。

そう告げたかったが、中に入れない…。

この瞬間、テフィオの中で何かの絲がふつりと切れた。

もう、いい。

そう思った。

もう、疲れた。

そうも思った。

そしてふらりと路地裏に入り込むと、その場にへたり込んだ。