暗陽節。

太陽が七日間もの間姿を隠す大規模な日食。

それがこんな恐ろしい意味を秘めていたとは。

恐ろしい…とは、妖精のファイツではなく、人間たちにとって、だが。

ファイツの周りの人間たちは皆恐慌状態に陥っていた。

なぜなら―

「どうなっているんだ!? 気が…気が、使えない!!」

「見ろ! 気の建物が…崩れるぞ!」

「うああああっ」

今まで、絶対的な力で人間たちを優位に立たせていた力、“気(タルクィニル)”。

それがこの暗陽節では、無に帰してしまうようだ。

シルフィはこのことを知らなかったのだろう。

知っていたとて、何かができたとは思えないが…。

ありとあらゆるものが気で創られたこの街は今、崩壊を始めている。あの強固だった気が、軽石ほどももろく、次々と人を呑みこみながら崩れ去っていくのだ。

気に頼り切った人間たちは、この事態に対してあまりにも脆かった。

それに加えて、妖精たちが一斉に大反乱を起こした。

身を守るすべのない人間たちは、次々と妖精の炎により焼かれていく。

滅亡の日が、来てしまった。

シルフィは、間に合わなかったのだ…。