テフィオはファイツの机に身を乗り出し、叫んだ。

「教えろ! 早く教えろ!!」

しかし、ファイツは首を力なく横に振る。教えたくないというより、教えたいけど教えられないといった感じの反応だったのだが、テフィオには何も見えていなかった。

ただ、ラダメシスの秘密を知ることができる、そのことで熱くなっていた。

「さあ、書け! 羊皮紙何枚になってもいいぞ!」

テフィオは羊皮紙を差し出したが、ファイツは頑なにそれを拒んだ。

その様子にテフィオがひどく苛立ったのは、仕方のないことだったのかもしれない。

それほど長年、テフィオはラダメシスだけを希望に生き抜いてきた。

その夢が叶うかもしれない時に、ファイツの拒絶は、テフィオにとって人生を拒絶されたような気がしたのだ。

テフィオは腹の底から低い声を出した。

「なぜ言わないファイツ。
言えば―――――殺されるからか」

ファイツの瞳が潤んでいることに、テフィオは気づかない。

ただ秘密を教えようとしない態度に苛立って、テフィオはファイツの胸ぐらをつかんで教室の壁に押し付けた。

「俺がお前を…殺せないとでも思っているのか!」

「…!!」

テフィオは足を振り上げ教室の窓ガラスを蹴破った。

飛び散る破片がファイツの目に映る。

粉々になったのは、窓ガラスだけであろうか。

テフィオは大きな破片を手に持つと、ファイツの喉元につきつけた。

「言え! さもなくば…殺す!」