ファイツはなぜ昨日、ただの水をぶちまけて逃げてしまったのだろう。

テフィオはそれが腑に落ちず、大して安眠できなかったために、結果として朝寝坊もせずに出勤できていた。

教室に入ると、珍しいことにシルフィがまだ来ていない。

ファイツだけがちょこんと、教室にひとつだけあるぼろの席に座って待っていた。

しかし、様子がおかしい。

うつむき、テフィオと目を合わせようとしない。

無表情だったあのころとは違い、ちゃんと感情は感じられる。だがとまどっている、…隠し事がある、そんな感じだ。

「ファイツ…?」

この時テフィオは恐ろしいまでの勘を発揮した。

そのことについて考えすぎていたせいかもしれない。

「ファイツ、お前まさか…まさか…」

テフィオが近づくと、ファイツはますますうつむいた。

「まさか、ラダメシスの秘密がわかったのか!!」

ラダメシスと聞いてびくっと体を跳ね上げたその動きと目で、テフィオにはすぐにわかった。

ファイツがついに秘密に目覚めたのだと!