気が付くとファイツはテフィオに全速力で突進していた。

今まさに彼が飲もうとしていた水はすべて、グラウンドにぶちまけられた。

「ファイツ――!?」

シルフィの驚きの声が聞こえる。

ファイツは荒い息をつき、はっと目を見開く。

自分は何をやっているんだ!?

でも今、やっと、やっと、わかったことがあった。

わかったことが、あったのだ。

「どうしたファイツ」

テフィオは目を瞠り、驚いたようにこちらをみつめている。

彼に背を向け、ファイツは脱兎のごとくその場を逃げ出した。

―自分はシルフィとテフィオが好きなのだ。

だから死んでなどほしくない。

もう、いいのだ。

復讐など、忘れていいのだ。

シルフィとテフィオが、いてくれるから。

大切な人が、できたのだから……。


ファイツはこの学校に連れてこられて初めて、いや、両親を目の前で失ってからはじめて、安らぎを感じた。

幸福を感じることができた。

ファイツはそっと、そっと、わき起こる幸せに任せて微笑む。

その時だった。

ファイツの中に、ひらめきが訪れたのは。


(な、んだこれ…これ…!
ラダメシスの、秘密って、まさか………!!)