テフィオは――

負けたのだ。

惨敗だった。

気が付くと腹を貫かれ、血の海に倒れていた。

「ディウエスになれぬ、気剣も作れぬ無価値な人間め。クズめ。死ね―!」

かろうじて命だけは助かった。それは念のためとテフィオの周りを自主的に張っていてくれた近衛の一人が、仲間と駆けつけて来てくれたからだった。

自分は強いと思って来た。

それだけがすがりつける唯一のものだった。

それなのにそれすらも、気という力の前では赤子も同然。

一対一で、老齢のバリバウスにすら、勝てないなんて―――。

テフィオの受けた衝撃は言葉で言い表せられるものではなかった。

そして傷の手当てを受けながら、暗い海を漂うような心持ちの中で、決心したのだ。

一刻も早く、最強の剣、ラダメシスを手にするのだと。

そのためにはなんとしてもファイツを、ラダメシスの秘密に目覚めさせなければ。

心を鬼にして、何が何でも、目覚めさせなければならない。

その決心に、シルフィが邪魔だった。

今は優しいものも、きれいなものも、純粋なものも、何も見たくなかったのだ。そうそれは多分…自分の醜さを露呈するから。

「どんなに醜かろうが構わない。
俺はラダメシスを手に入れる――――
なんとしても」

呟きは最初力強く、しかし語尾が何かに迷うように震えていた。