一週間前。

学校の休日に皇宮へ帰ろうと路地を抜けるとき、突然目の前に完全武装したバリバウス一味が現れたのだ。

十人余り皆が皆、輝く気の鎧に身を包み、立派な気剣を手にしている。

テフィオはその時点で、自分の命が狙われていたこと、バリバウスの辞任が罠だったことを悟った。

「辞任は見せかけよ。この時を待っていたのだ!
貴様は私の政治の邪魔にしかならん。
いくら世継ぎの皇子でないとはいえ、皇宮に戻られては発言力が無視できぬ。
私はな、もっともっと儲けたいのよ。わかるかな?
私が苦労してつくりあげた人身売買組織までつぶしおって…
この機にその邪魔な命、ちょうだいする!」

バリバウスはいったん校長職を辞してでも、テフィオを潰さなければならないと判断したようだ。確かに、皇子という立場は敵に回していいものではない。

迂闊だった―テフィオは内心冷や汗ものだったが、余裕の表情を崩さなかった。

「笑止。俺の剣の腕、知らぬわけではあるまい。何人束になったとて同じこと!」

テフィオが木刀をすらりと構えると、バリバウスが狂ったような笑い声をあげた。

「よいよい、私とお前、一対一で戦ってやろう。
気剣も出せぬ小僧に、私が負けるとでも? ばかばかしい」

「なんだと!」

テフィオは大きく踏み込み、喉を狙って木刀を一突きした。

正確無比な一撃だった。

しかし―

瞬時に構成された気の喉当てによってその攻撃はあっさりと弾かれてしまった。

二撃、三撃、急所を狙ったどんなに技術の高い攻撃も、気の鎧の前にはなすすべもない。

テフィオには矜持があった。

たとえ気剣を使えずとも、誰にも負けぬ剣の腕があるという矜持。

しかしそれが…粉々に砕け散った。