テフィオはまるで別人のような冷淡な瞳をシルフィに向け、ばっさりと切り捨てるように言い放った。

「―いいえ。まったく見ず知らずの小娘です」

「!! そんな…」

彼の一言はシルフィに衝撃を与えた。それは最近の彼の様子からうすうす感じていたことではあったが…。

「どうしちゃったの!? テフィオ先生。最近変だよ! いったい、何があったの?」

「…。では、私はこれにて」

テフィオはシルフィとの関わりを全否定しただけでなく、奴隷解放を訴える彼女の手助けをまったくするつもりがないらしく、そのまま謁見の間から立ち去った。

「御嬢さん」

かわりに優しく歩み寄ってきたのは、玉座の横に立っていた美しい青年だった。

「この国に妖精奴隷は不可欠。理想論では国は成り立っていかないのだよ。わかるかい?」

「わかりません!」

彼がおそらく、テフィオの義理の兄、セクスティウス皇子(ディウエス)なのだろう。

本来であれば口をきくことも生涯ないであろう相手。

だがシルフィは怯まなかった。

一度捨てた命だ。それを救ってもらい、目標をもらい、突っ走ってきた。今更止まれやしない。止まるつもりもなかった。

「人間を助けるには、絆を取り戻す以外ないんです。皆様は伝説の炎で焼き尽くされてもよいとおっしゃるのですか!?」

シルフィの必死の訴えに、国王ががははと余裕のある笑声をあげた。