二人は寒気を感じた。

誰よりも絆を信じられないであろう境遇で、生まれ育った彼女。

そんな彼女がまっすぐにひたむきに信じ続ける、絆(プティ)。

彼女が愛する景色、「プティの風の丘」を、二人ははじめて彼女が感じるように感じていた。

空。

大地。

風。

鳥。

石ころ。

まわる世界の中に、息づく命たち。

まわる世界。まわる、まわる…その中に、確かにあるもの。

…絆(プティ)。

プティに抱かれた、存在である、自分。

シルフィの言葉が、存在が、願いが、直接胸に響いてくる。

絆を育て、守る妖精先生。

テフィオは思う。俺もそうなのか、と。

俺も妖精先生なのだ、と。

それが何やらとても誇らしい、大切なことのように感じた。

ファイツは思う。

絆は…あるのかも知れないと。

このシルフィならば、教えてくれるかもしれないと。

そして自分はずっとそれを知りたかったのだと。

あの日はじめて目が合った時から、本当はわかっていたのだ。

彼女の中に絆があること。

彼女がほかの人間とは違うこと。

「…シルフィ」

テフィオがかすれた声で彼女を呼ぶ。

名前で呼んだのは、はじめてだった。

ファイツが何か言おうとして声が出ず、羊皮紙に何か書こうと手を伸ばす。

世界は三人を優しく包み込み、すべてがつながり回りだす―そんな予感を感じさせる風が吹く。

その時だった。