小屋の周囲の土地を耕し、作物を育てた。

卵や牛乳を得るため牛や鶏もアンティストたちが連れて来てくれた。

彼らの世話をしながら、機を織り、衣服をつくった。

そのすべてを、アンティストたちは手伝い、時に優しく見守ってくれた。

そして読み書きを習った。

シルフィにとって、こんなに満ち足りた生活は初めてだった。

役人たちも入ってこられないこの森にいれば、国民に義務付けられた気の納税もかわすことができた。

二月も経つ頃には、小鳥のプチは順調に気の中毒から回復して、元気いっぱいに飛び回るようになっていた。

「いいなあ、プチは空を飛べて」

ある日シルフィが羨ましげにそうつぶやくと、アンティストが穏やかな目をしてこう言った。

「ふふ、人だって空を飛べる時があるよ」

「ええ? それってどんな時?」

「それは秘密だ。自分でみつけてごらん」

「わかった! 絆に関わることでしょう」

「さあ、どうかな」

アンティストは曖昧にはぐらかしたが、シルフィはその態度で確信した。

絆に関わることだと。それで空を飛べるのだと。

シルフィは瞳にきらきらと星を宿して、ほうっと熱いため息をついた。

「空を飛べたら、あたし……」

「ん?」

「ううん、これは秘密! アンティスト様にも教えてあげないっ」