妖精王が手当てを受けた小鳥をシルフィにそっと手渡した。

「この子もそれを手伝いたいそうだ。この子は怪我だけじゃない、気の食事を口にして、中毒になってしまっていたようだ。この森のプティの樹の樹液で、中毒から解放してやることができるから、精一杯介抱してあげなさい。名前がいるな…シルフィ、お前がつけなさい」

そしてシルフィは名付けた。

その小鳥に。

アカサイテの方言で、絆(プチ)と…。

『うん! いい名前だよ! ありがとうシルフィ! …ってあれ、これ、僕の声、だよね?』

「話ができればよいと思ってな、お前に声を送る能力を授けた。シルフィと二人、励めよ」

「『はい!』」

「それから、シャドウ!」

妖精王の呼びかけに応じ、窓から一匹のしなやかな黒狼が飛び込んできた。

それは見たことのないほど美しい毛並をした狼だった。

幼いシルフィが両腕を精一杯伸ばしても抱えきれないほど大きい体をしている。

黒々とした瞳がシルフィを見つめる。

その瞳は凛として威厳があり、もちろん怖くもあったが、それよりも美しいという感情の方が大きかった。

「この狼は迷いの森の主。この森のいかなる生物もこいつに従う。
シャドウ、お前にも今、人間に声を送る能力を授けた。これからこの二人の面倒を見てやってくれ。私たちが去ってからも、な」

『承知した』

黒狼はシルフィに歩み寄ると、じっと、何もかもを見透かすように見つめてきた。

「シャドウ…よろしく…」

シルフィが少し怯えながらそう挨拶すると、シャドウはふんと鼻を鳴らして言った。

『妖精王の頼みとあらば断われないが、お前が妖精先生になることについてはわらわは協力できんからな。この森から人間の中に出て行くなど…認められん』

「でも…こんなあたしと、一緒に、いてくれるんでしょう? ありがとう」

『………』

シャドウが少し優しい目になった。

かくして迷いの森で、シルフィの新生活が始まった。