サーシャが気を使えないことが、ついに保母にばれてしまったのだ。

保母の態度は掌を返したようになり、すぐに彼女は役人に通報した。

暴れたサーシャは…すぐさま、処分された。

すなわち…シルフィたちの目の前で、役人の気剣により無残にも斬り殺されたのだ。

「サーシャ…! サーシャ…!!」

限界だった。

なぜ…なぜ、ただ“気”を使えないというだけで、これほどまでに忌まれなければならないのか。

誰にも必要とされず、誰からも死を求められる。

ならば―――――。

シルフィは大雨の日、孤児院を抜け出し、増水した川へ走った。

本気で死のうと思ったのだ。

川は激しく荒々しく、小さなシルフィの命などすぐに呑み込んでしまうはずだった。

しかしその時――

今にも川に呑み込まれそうな川岸の巣の中に、けがをした小鳥をみつけた。

シルフィはたった今自分が死のうとしていたことを忘れて、小鳥を助けなければと思った。

自らは流されぬよう、体をつっぱって必死に手を伸ばし、小鳥を救いあげる。

しかしそのまま体を岸に持ち上げようとしたところで、足元が滑った。

あっと思う間もなかった。

シルフィと小鳥は激流に呑まれる―はずだった。

その時、不思議な出来事が起こらなければ。

水がぱっくりと割れ、川底がむき出しになり、シルフィと小鳥を優しい光が包み込まなければ。