「次はお前の番だ、忌み子め」

「!!」

シルフィは恐ろしさのあまり震えながら、それでも命をつなぎとめたい本能で、食事を差し入れに来た役人の隙をつき、一目散に逃げ出した。

その時に役人に捕まらなかったことが、運が良かったと言えるのかどうか…。

悲惨な日々が、シルフィを待っていた。

野良犬のように放浪する日々。

その辺の草や実を食べておなかを壊しながら、はだしのまま、シルフィはなんとか生き延びた。

優しくしてくれる人がいなかったわけではない。

ただ、シルフィが逃亡中の忌み子だと知るや、皆が皆役人に突き出そうとした。

それほどに忌み子は忌まれる存在なのだ。

追われ、誰からも嫌われながら、三年の月日が流れ、8歳を迎えた時、シルフィはある出会いを経験する。

身を寄せた辺境の孤児院に、実は自分も忌み子だという子がいたのだ。

忌み子だということを隠して、孤児院にいるのだという。

ひとつふたつ年下の女の子、そばかす顔が愛らしい、名前はサーシャ。

シルフィに初めてできた友達だった。

「 “気”を使わなきゃいけない場面では、隣の子が失敗して捨てた気をうまく利用するの。気づかれないわ」

二人はいつも一緒にいるようになった。

一緒に木の実のパイを焼き、一緒によだれをたらして昼寝をし、一緒に跳ね回って遊んだ。

三度の食事と清潔な寝床を与えられる孤児院での生活は、シルフィにとって楽園のように感じられた。保母も優しい女性で、二人を穏やかにかわいがってくれた。

しかし、平穏な生活は長くは続かなかった。