シルフィは冬(ゲルマ)の二の月(1月)に、辺境の村アカサイテで生まれた。

母は糸を紡ぎ機を織る“農民”、父は家畜の世話をする“農民”で、二人は能力に釣り合いが取れるからという理由で夫婦とされたらしい。

二人は強い気の力を持った子が生まれてくることを願いながら、初子シルフィを腕に抱いた。

しかし、シルフィは気でおしゃぶりをつくることも、おもちゃをつくることもせず、3歳になってもまったく“気”を使うそぶりを見せなかった。

この頃から両親はシルフィに辛くあたるようになった。

食事抜きで重労働をさせ、奴隷のようにこき使った。

シルフィはなんとかして両親に愛されようと、健気に仕事をこなした。

家畜の糞尿掃除、機織りや料理や掃除の何から何まで、シルフィは幼い身の上で必死にこなしていった。しかし、その想いが報われることはなかった。

5歳になっても気を使えない、すなわち“忌み子”だと知れるや、両親はごみを捨てるかのようにあっさりと、シルフィを役人に引き渡した。

家ではすでに気で立派におしゃぶりをつくる妹が生まれていた。

シルフィは、捨てられたのだ。

“忌み子”―その言葉の意味もよくわからぬままに、シルフィは「いらない命」として処分されようとしていた。

役人に引き渡されたシルフィたち忌み子は、役所の牢に入れられた。

同じ牢に入ったのは、同じ年頃の活発な男の子だった。しかし名乗り合う前に、男の子は役人に連れて行かれ…そして。

無残に斬り殺された亡骸となって帰ってきた。