「あたし、“ある人たち”と約束をしたの。
この国の滅亡を止めて見せるって。
人間と妖精の絆(プティ)を取り戻して見せるって」

「 “ある人たち”…?」

「そう。あたしの憧れの人、最初の妖精先生アンティスト様と、妖精王様と」

あまりにも突拍子もない話に、テフィオもファイツもにわかには話の内容を理解できなかった。

理解するまで数拍。そののち、テフィオが叫ぶように言った。

「バカな! 彼らは去って、戻ってきていないはずだ―ましてや一介の町娘であるお前とお会いになるはずが」

「信じてくれなくても構わない。…でも、本当のことだよ。
あたしは彼らに、命を助けられたんだ」

プチが慌てたようにはばたき、シルフィの声を遮った。

『待ってシルフィ。その話、それ以上は…』

「いいのプチ。二人には、知っておいてもらいたいんだもの」

『シルフィ…』

『プチよ。嬢がそこまで言うなら止めるな。わらわも止めぬ』

シャドウの声はプチとは違い落ち着いている。それに影響されたのか、プチも大人しくなり、ただ気遣うようにシルフィの肩にとまった。

プチとシャドウは何か知っているらしい。

いったいこの話がどう展開していくのか、テフィオもファイツも固唾をのんだ。

そして、シルフィはその決定的な一言を、口にした。

「あたしね…“気”を使えないんだ。“気”が弱いんじゃない、使えないの」

「!?」

「 “忌み子”、なの…」

二人がその内容を理解するのに、今度は数拍以上の時間を要した。

衝撃のあまり開いた口がふさがらない。

やがてテフィオが力なく声を絞り出す。

「う…そだ…。冗談だろう? この国で忌み子が生きてその年になれるはずが…」

「逃げたんだ、あたしは…」

シルフィが語りだしたのは、あまりにも悲惨な過去であった。