テストを終えたファイツがぼろ教室に戻っても、シルフィとテフィオの姿はなかった。

ファイツはそのことになぜか不安を覚え、駆け回って二人を捜した。

こっそり職員室を見に行っても、テフィオの宿舎まで行っても、二人はみつからなかった。

テストのことをなんて言えばいいのかと肩を落としながら自然と足が向かったのは、シルフィが「プティの風の丘」と呼ぶあの丘だった。

そこに、二人はいた。

というか、最初はテフィオだけがいて、見ているうちにシルフィがやってきたのだ。

さわさわと芝草が風に揺れる中、月桂樹の下で、テフィオはどうやら横になり、眠っているようだった。

徹夜したのだから無理もない。人間にとって眠らないことが辛いことは知っている。

あどけない寝顔だった。

眉間にしわも寄っていない。いい夢でも見ているのかもしれない。

その時やってきたシルフィは眠るテフィオに気づいた様子だったが、何も話しかけることなくそっと、そっと、彼の隣に腰掛けた。

絶対、眠りを妨げないようにと。

息を詰めてみつめているのがわかる。

その視線のやわらかさ、その視線にこもる愛しみに、ファイツはなぜか泣きたくなった。

二人は間もなく自分の人生からいなくなる。

そのことで、なぜ自分はこんな気持ちになるのだろう。