不意に、二人に出会った時のことが思い出された。

シルフィは、面接会場にシャドウとプチを連れて来ていて、自分はそこに乱入して頭突きを食らわせた。

至近距離。はじめて目が合った瞬間。

ファイツはなぜかその瞬間のことを忘れられなかった。

なぜなのかは、今でもわからない。ただ…

―ただ?

その答えを曖昧にしたまま、テフィオを思う。

いかにも教師然とした態度で高圧的に挨拶したテフィオ。

出会いは最悪だった。大嫌いな人間と、勉強などまっぴらだと思った。

でも時が経って、彼の色んな一面を知った。

滅多に笑わないが、ごくたまに笑顔を見せることがあること。寝坊癖があること。

とにかく強いこと。

そんな二人が、いなくなる――――。

(どうしよう!!)

ファイツの焦りが最高潮に達した時、「そこまで」と教師の声がした。

ファイツは結局一問も解くことができないまま、テスト用紙を提出することとなってしまった…。

(どうし、よう………)

ファイツにはわからなかった。

なぜこんなにも喪失感を感じているのか。

何を失ったというのか。

最初から自分にはもう、失うものなどないというのに。