テフィオの講義は一日中続いた。

ファイツは時折問題には答えるものの、やる気を見せなかった。問題が難しすぎるせいもあっただろうが、ファイツが二人に心を閉ざしていることが原因だった。

テフィオにはもちろんだが、優しい態度のシルフィにも、苛立ちが募っていた。

「もういいよ。テフィオ先生。ファイツも疲れているみたいだから、部屋に返して―」

(部屋に返すだと? あの牢獄に? 知っているくせに、返すだと…?)

「ううん、外に出て、少し休憩を―」

(今更取り繕っても遅い!)

「ごめんねファイツ。なんか飲む? それともこれ食べる?」

(またプティの食事か。こういうのが、重荷なんだ。救いたいとか言っても、結局これしかできてないじゃないか。中途半端な優しさで、中途半端なことをしやがって)

『ちょっとさぼっちゃおうか?』

茶目っ気たっぷりの筆談にも、腹が立っただけだった。

羊皮紙を丸めて、投げつけてやった。

夜明け頃、テフィオがいらいらと黒板を叩いて出て行ってしまった。

シルフィが後を追ったので、ファイツもこっそりついていってみた。むろん、家の陰に身を潜め、声だけを聴くかたちだ。

家の周りに植えられた木の幹を叩いて、吐き捨てるように言うテフィオの声がする。

「くそ! まだ最強の剣ラダメシスの秘密がわかっていないのに! このまま謹慎になんてされたら」

「最強の剣なら私使えるよ」

「なんだって!?」

シルフィがなんでもないことのように言った台詞に、テフィオが血相を変えたのが声でわかる。

「お、お前が使えるのか!?」

「そうだよ。見てて」