テフィオはいったん家の中にさがると、本を一冊手に持って再び戻ってきた。

その本のタイトルは“学校教育法”。

「ここを見てみろ」

「……」

“校長の持つ権限”の項に、“入学より四か月経った生徒には抜き打ちで試験を行わせ学力を確かめることができる。その学力が規定以下と判断された場合、生徒は補習、担任教師は減給とすることができる”と記されている。

これの何が、と思ったが、よくよく見れば小さな文字で、“規定以下の中でも特に著しく成績の悪い生徒は退学、担任教師は解雇することができる”と書かれていた。

「でも! 公務員法で半年は解雇できないはずじゃ…」

「確かに、解雇はまだできない。だが、自宅謹慎ならさせられる。バリバウスは、ファイツを退学、俺たちを謹慎させ、身動きできなくするつもりなんだ」

「ええ~!!」

シルフィは事の重大さをやっと理解した。

いやもちろん、何やら大変なことのような気がしたからこうして宿舎までやってきたのだが、それはまったくの勘だったのだ。野生の勘―シルフィらしい。

「抜き打ちテストにはとびきりの難問を集めた“難テスト”が通例数枚、ランダムにまぜられる。おそらくバリバウスはなんらかの手を使って、確実にその難テストをファイツにまわしてくるだろう。急がないとまずいな…」

テフィオはくしゃりと紙を丸め、毅然とした瞳をシルフィに向けた。

「明日までに、徹夜してでもファイツには、難問に答えられるだけの勉学を頭に叩き込んでもらう。おいお前、ファイツを連れてこい。今すぐはじめるぞ!」

「わかった!!」