珍しく朝一番に教室にやってきたテフィオは、両手に抱えきれないほどの本を持っていた。

「テフィオ先生、何それ?」

「…今日は通常の授業はしない。調べ物をする」

「調べもの? 何を?」

テフィオはシルフィの問いを無視して、教卓の上に持って来た書物をどさどさと載せていく。

そして両手があくと、シルフィの額をぴんと小突いた。

「まったく、のんきな面をするな。一昨日の事件を忘れたのか?」

「アジトに潜入したこと? 忘れるわけないよ」

「あんなことがあったんだ。バリバウスは絶対に何か手を打ってくる。俺たちを徹底的につぶしにかかるだろう。先手を打つんだ」

「どうやって?」

「最近よく囁かれる“滅亡の日”について徹底的に調べる。そして今のままでは本当に滅亡するぞ、いいのか、皆死ぬんだぞと周囲の奴らに脅しをかけて、おびえさせ、圧力をかけて、奴に翻意せざるをえなくする。いい案だろう?」

「……え? 滅亡の、日…?」

シルフィは驚いたというより、何か触れてはいけない話題に触れた時のような、焦りのような感情をその顔に浮かべた。

そしてすぐにそれを取り繕うように笑顔を浮かべた。

その反応に、テフィオは逆に驚いて、「え?」と思わず返してしまう。

いつものシルフィなら、「それだよ! よ~しバリバウスをやっつけよう!」ぐらいは言って、絶対食いついてくると思っていたのだ。

けれどシルフィの様子がおかしいのはいつものことかと、テフィオはこのことをあまり重く考えなかった。