中央妖精大学校の塀沿いに、正門目指して駆けるテフィオの目の前を勢いよく何かが横切り、テフィオは足を止める。

そして目を見開く。

信じがたい光景がそこにあった。

黒々とした毛並の美しい狼の背に、なんと少女が乗っているではないか。

少女の白い頬や目鼻立ちの整った顔立ちが、一瞬ながら強い印象を彼に刻む。

そして狼が、少女を背に乗せたまま、跳躍した。

ばしゃりと水たまりを蹴った狼の脚から泥が飛び跳ね、テフィオを濡らした。

それに気づいたのだろう。

少女の視線が動き、テフィオをとらえ―

そして笑った。

「ごめんね!」と唇が動いたのがわかった。

その唇の紅さに気を取られている間に、その姿は塀のむこうへと消えた。

女性に気を取られるなど、彼にしては非常に珍しいことだ。

“運命に定められし出会い”―…

そんなセリフが脳裏をめぐったが、すぐにはっとした。

こんなところで突っ立っている場合ではない。

彼は服についた泥を乱暴にぬぐうと、再び駆け出した。

なんとしても、間に合わせなければ。