「ありがとう、 僕のわがまま聞いてくれて」 そのありがとうを聞きたいがために、あたしはずっと生きてきたような気がした。 「こちらこそ、楽しかったです」 そういって、鞄を肩にかけた。 教室を出ようとしたあたしを、 夏樹くんが「ちょっと待って」と引き留める。 振り向いた瞬間、視界が暗くなる。 ────今まで、こんな力で抱きしめられたことなかったな。 そうぼんやりと考えていたときに、夏樹くんはしぼりだすような声で言った。 「恋しくなる」