**** 「また振ったの?」 机の横の紙袋を見ながらあたしは尋ねた。 2月14日、バレンタインデー。 あたしも人並みに友チョコを作り、徹夜でラッピングし、朝から渡しまくった。 夏樹くんにとっては『宇宙でいちばん不幸になる日』らしいけど。 「やば、めっちゃ時間かけてる、このチョコ」 「顔がタイプじゃなかったから付き合えないんだよ」 だって、毎日見るのに美人じゃないとかやってられないし。 けらけら笑う夏樹くんは、真面目にぶっ飛ばしたいくらい女の子の敵だ。