午前3時、先生のカオ。








「あっ」



 再び夏希の方に視線を移した時、そこに夏希の姿はなかった。



「夏希……?」


 やっと呼べた名前。

 やっと出た声。



 だけど、遅かった。





「……ち、なつ。今、の」



 後ろから、鞄が落ちる音とお母さんの震えた声が聴こえた。

 お母さんは、見たのかもしれない。




「あ、あ……」


 あたしはゆっくりと立ち上がってベランダへと近づく。

 だけど、ベランダに出ても下を覗くことは出来なかった。


 そっと、頬についた夏希の涙に触れる。

 涙は、あたしの指先に移り、すぐに溶けてなくなってしまった。



「なつ、き……け、警察っ!」


 お母さんのそんな声を聴きながら、何が起きたのか必死に理解しようとする。

 でも、分からない。



 夏希は、何処に消えたの?



 少しずつ理解していく頭を押さえ、分からないままでいようとする。

 それでも、少しずつ、少しずつ、分かっていく。



「い、いやぁぁぁぁぁぁ!!」