ムカつく。

 悔しい。

 恨めしい。

 疎ましい。

 苦しい。

 悲しい。




「……夏希なんて、いなくなればいいのに」


 そっと呟いたその言葉も、闇の中へ消えて行った。











 部屋に着き、ベッドに寝転がったあたしはふと、懐かしい記憶を蘇らせた。









 小学4年の頃。


 学校の授業で『自分の名前について知る』というものがあった。




 あたしと夏希は、お母さんに聞いたんだ。


 お母さんは、

「二人が生まれたのが夏だから、夏を付けたのよ。千夏の〝ち〟は〝千〟でしょう?長生きしてほしくてその名前にしたの。沢山生きて、沢山学んでほしいって」



 素直に、嬉しかった。


 お母さんから聞かされる、あたしへの思い。

 本当に、嬉しかったんだ。



「じゃあ、夏希は!?」


 夏希が目を輝かせながらお母さんに問う。