「……そう」


 あたしは鞄の中を探り、宿題プリントを夏希に差し出した。



「やったぁ♪」


 無邪気に笑う夏希を、殺したいって思った。







 最近、ずっとそんな風に思ってる。


 鈍感で天然で。

 あたしの気持ちに気付かずあたしを苦しませる夏希を、本気で恨めしく疎ましく思ってる自分が心を支配する。





「……じゃあ、あたしは部屋行ってくるね」



 そう言ったけれど、浮かれている夏希も、それを見て微笑ましく笑っている両親も、誰も、あたしに返事を返してはくれなかった。






 ツキンッ……



 胸が、また。


 痛くなる。

 痛くなる。



 心が、また。


 苦しくなる。

 苦しくなる。