肝心な時はいつだって優しい。

 学校の時の玲汰先生とは伝え方とか全然違うし、不器用だけど。


 結局、彼は優しい人なんだ。

 隠しきれてないその優しさが、あたしの涙腺を崩壊させていく。




「意味、分かんないっ……教師なのにぃ」


「………だな」


「バカ……」


「おい、教師に向かってなんてこと言うんだ」


「玲汰先生だって、生徒に向かってなんてことしてんの」


「それはっ……」



 初めて、玲汰先生に言い争いで勝った気がする。

 泣きながらも微笑んで、あたしは玲汰先生の胸に自分の顔を押し当てた。



「……それ、あんまり可愛くない」


「知ってる。あたしは夏希じゃないから可愛くなんてなれないもん」


「だから、誰だよ、夏希って」


「……教えなーい」



 涙は、流れ続ける。

 だけど何故だろう。


 玲汰先生の温もりのおかげで、気持ちがほんの少し楽だ。




 やっぱり、不思議だ。


 玲汰先生も。

 玲汰先生と一緒にいる時の自分も。





「うぅ……」


「……泣きすぎ」



 呆れた様に笑う玲汰先生は、あたしを抱きしめる腕に力を込めた。