午前3時、先生のカオ。






 このままじゃあたしは最悪な選択を選んでしまう気がする。


 だから、玲汰先生に止めて欲しくて。




 あたしは立ち上がってキーケースを手に取ると、時間なんて気にせずに走り出した。


 階段を降りて、まだ灯りが灯るリビングを横切る。

 玄関で靴を履いていると、リビングからお父さんとお母さんが出てきた。



「なに、してるんだ?こんな時間に」


「どこ行くの?」



 あたしは一切問いかけに応じない。


 今はただ、玲汰先生に会いたくて。

 会いに行くことだけを考えていて。



「答えなさい、千夏」


 お父さんの静かだけど怒りのこもった声が玄関に響く。



 それでも立ち上がって外に出ようとしたあたしの腕を、お父さんが掴む。


 あたしはお父さんの顔を睨むように見た。

 久しぶりにちゃんと見た顔は、少しやつれていた。



「お前ってヤツは!夏希のことを考えないのか!!」



 お父さんが怒鳴る。


 あたしは、そのセリフに痛みを覚えた。


 考えてるよ。

 あたしだって必死に考えてるよ。


 どうやったら償えるかって。

 いつだって、苦しんでる。


 お父さんは、いつでも夏希だ。

 夏希がいなくなった、今でも。