確かに最近、玲汰先生のことばかり考えている。

 だけど、決して忘れたわけじゃない。


 忘れられない。

 忘れちゃいけない。




「ねえ、お姉ちゃん。なんでお姉ちゃんだけ幸せなの?幸せそうに笑ってるの?」


「え……」



 夏希の笑顔は徐々に消えていき、あたしを強く睨んだ。



「ねえ、お姉ちゃんなんかに幸せになる権利、あるの?」


「ない、よ……」


「じゃあなんでいつまでも生きてるの?なんで死なないの?不公平じゃない。お姉ちゃんだけ、生きてるなんて」



 夏希はあたしに近づいてくる。

 その分、あたしは後ろに下がっていく。



「なんで逃げるの?いつも、いつも。そんなんで償ってるつもり?ねえ、答えてよ。ねえ」


「ごめ、んなさい……ごめんなさい」


 涙が溢れる。


 後退していく足が、止まった。

 それでも近づいてくる夏希。



「ねえ、あたしから奪ったもの、早く返してよ。ねえ、ねえ!!」


「ごめんなさい……!もう、許してぇ……」



 あたしはその場でしゃがみ込んでしまった。