暗い、暗い、闇の中にいた。





 灯りもない真っ暗闇を、彷徨うように歩いていた。




「……お姉ちゃん。千夏お姉ちゃん」


 懐かしい声が後ろから聞こえて、あたしは勢いよく振り返った。


 その瞬間、眩い光に包まれ、空間がぐにゃりと歪む。



「っ……」


 ゆっくり目を開けると、そこには……



「な、つき……?」


 あの日と同じ、綺麗な白いワンピースに身を包んだ夏希が立っていた。



「お姉ちゃん、久しぶり」


 驚いて固まったように動けなくなっているあたしをよそに、あの頃のままなにも変わらない夏希が笑顔を見せる。




「な、んで」


「だってお姉ちゃん、あの時のことを忘れてるんだもん。」


「忘れてなんか……」


「ううん、玲汰先生…だっけ?その人のことばかりじゃない。あたしにしたこと、覚えてる?」



 夏希は、相変わらずにこやかに微笑んでいる。