手の中にある携帯を、更にギュッと力を込めて握った。




 もう、寝ているんだと思ってた。


 こんな夜遅くまで仕事してるのかな……?



 物音一つ立っていない部屋は静かで、リビングの音がやけに煩く聞こえてくる。

 玲汰先生の悩むような声と、時々紙をめくる音。


 気がつけば、ドアをほんの少し開けてリビングを覗いていた。





「あっ……」



 やっぱり。


 思っていた通り、玲汰先生は仕事をしていた。

 あたしに見せているどちらでもない真剣な顔が、彼が教師だということを思い出させる。


 こうやって見ていると、本当に遠い存在に思えてくる。

 ふとそう感じて、悲しくなった。




 トクン……トクン……トクン……


 徐々に速くなる鼓動に、あたしの心は掻き乱されていく。


 息が、詰まる。

 胸が、苦しい。



 なにこれ。

 なにこれ。



 ぎゅっと、服の胸の所を掴んだ。