気付かれないようにしといて何だけど、あたしが泣いてるのにいつもと同じ無表情の玲汰先生は一言、

「そんなとこいたら通行人の邪魔だから」


 あたしの涙は、すっかり引いてしまった。



 この人には、情ってものが無いのだろうか。


 さっきは優しいなと思ったのに。

 あの日も、優しかったのに。


 通行人の、邪魔?

 確かに、そうだけど。



「ほ、他に言うことないの?」


 それだけではないはずだ。そう思って聞いてみるけど、

「他って?」

 と不思議そうに言われてしまった。




「信じらんない……」


「意味分かんねぇ」



 玲汰先生は半分呆れながら立ち上がり、あたしの手を引いた。


「……わっ」


 手を引かれたから立ち上がったあたしは、力が抜けているため少しよろけた。



「ほら、帰るぞ」


「……別に、1人で大丈夫だし」



 そう強がりながら言うと玲汰先生は、はぁ……とため息を一つ吐いた。


「俺ん家に行くんだから、一緒に帰んの」