「……んなこと、簡単に言うなよ」
そんな声が、あたしの背後から聞こえた。
あまりにも優しい、震えているのに綺麗な声だった。
誰もいないと思ってたからその声に驚いたあたしは、後ろを振り返る。
「……せん、せ…い」
そこには、さっき見た部屋着姿のままの玲汰先生がポケットに手を入れて立っていた。
あたしを見つめるその瞳は悲しげで、胸が締め付けられた。
まるで、あたしを想ってくれてるみたいだったから。
「はぁ……なんか気になって追いかけてきたら、これだよ」
玲汰先生は自分の頭をクシャクシャッとした後、しゃがんであたしと同じ目線の高さになった。
「……うっさい、ほっといて」
泣いてることもさっき言っていたことも気づかれてるだろうに、あたしは気づかれないように目を逸らした。
「あっそ。でも一つだけな」
玲汰先生は心底面倒臭そうな顔をする。
それなら、追いかけなければいいのに。
なんて思うけど、心の底では追いかけてくれたことに安心してるあたしがいる。
だって、もし今玲汰先生が来てくれなかったら、あたしは何してたか分からないから。
きっと、もう立ち直れないくらい自分を傷つけていただろう。
心の中で何度も自分を傷つける言葉を言って、自分を苦しめていたかもしれない。
大袈裟かもしれないけど、もしかしたら自殺もしてたかもしれない。
だから、玲汰先生が来てくれて良かったって思う。