下の名前ならいいって問題じゃない。

 というか、担任のあだ名が下の名前っていう方が駄目に決まっている。


 せめて、先生くらいは付けろ。




「ちぇっ、なんで駄目なの?」


 林田は、頬を膨らませた。

 それ、可愛くない。と心の中で言う。



「当たり前。教師にむかってあだ名とかあり得ない」


「えー!いいじゃんか、そんなくらい」


「駄目。絶対に嫌」



 そう言うと、林田は「えー」と言いながらソファに凭れかかった。

 俺はそんな林田を呆れながら見つめる。



「……それよりも、なに普通に俺ん家でくつろいでんの」


「だって、家にいてたくないんだもん」


 林田は、天井を見つめながら答えた。



 そんなことくらい、知ってるし。


「なんで?」

 だけど俺は、自然と理由を聞いていた。


 林田はそれでも天井を見たまま、

「聞きたい?」


 俺は、

「いや、面倒臭いからいい」


 林田と同じようにソファに凭れかかって、天井を見つめた。