換気扇が開く音がする。

 きっと、煙草でも吸っているのだろう。



 あたしはすぐに振り返って、先生のいるキッチンを見つめた。




「……学校、行かないの?」


 そう訊ねると、

「今日はもう、休む。今はキャラ作れない気分だから」

 先生は、冷たい声でそう言った。



「そう……」



 あたしは壁にかかっている時計を見る。


 もう、8時を針が示していた。




 あたしも、同じだ。

 あたしはまだそこまでキャラは作ってないけど、誰かに嫌われることとか、人からの視線とかが怖い。


 あの時も、あの時も。

 いつだって、あたしを見る人の目はあまりにも鋭かったから。



 だから、先生には誤魔化してほしくなかった。


 どんなことが先生に起こっていて、どんなことを先生が隠してるかなんて知らないけど。

 自分の心にまで嘘は吐いていてほしくなかったから。



 分からないものだ。

 普段顔を合わせている人でも、知らないことの方が多いなんて。


 なんで人は、自分を隠すのだろうか。