「あ゛?」


 先生は、話す度に下げていった頭を上げ、あたしを見た。



「だって、あたしはもう、今の先生を受け入れてるから。確かに、人は相手を決めつけで判断する。でも、それが違うって分かったら、もう一度相手を見直すんじゃないかな?そう言う人がどれくらいいるのかは分かんないけど……」


「…………。」



 先生はただ、あたしを真っ直ぐに見つめる。




「それに、先生は変な目で見られるのが面倒臭いなんて思ってないでしょう?本当は、人からの目が怖いんだよ。誰かに自分を受け入れてもらえないのが怖いんだよ。だから、人の目を気にしてキャラを作ったんでしょ?嘘……もう吐かないで」


「怖い……?」



 先生は、あたしの言葉に理解を示さなかった。

 きっと彼は、怖いと思っていることに気付いていないんだ。


 彼がよく言う、〝面倒臭い〟という言葉で、彼は怖いという言葉を隠してたんだと思う。




「そうだよ。面倒臭いと怖いは違うよ。強がってるみたいだけど、本当は怖いんだよ。先生には、そう思ってしまう出来事が、きっと在ったんでしょ?そして、それから先生は避けてる」



「…………」




 先生は、今まであたしを真っ直ぐ見ていた視線を泳がせた後、ゆっくりと立ち上がった。


 そして、

「……お前には分かんねぇよ」


 あたしの隣を通って、キッチンへと消えて行った。