あたしは先生のその行動に驚いて、固まったように動かなくなった。
今、なんて言った……?
今、どんな顔した……?
今、どんな声だった……?
いつも学校で見ている優しくて人気者の先生が、今、あたしの前に現れたのだ。
それはいつも通りだけど。
昨日、あたしは確か補導されて。
迎えに来てくれたのは、担任の理科教師、宮城玲汰で。
ただ、その時あたしに見せた顔は、いつもと正反対で。
いつも笑顔の優しい先生が、無表情の冷たい先生になっていた。
最初は驚いたし、慣れなかった。
でも、不思議なことに、たった数十時間であたしは、こんな先生を普通に受け入れてしまったのだ。
〝宮城玲汰=冷たい〟という方程式までつくれるようになったのだ。
なのに、また。
いきなり性格が変わってる。
この人は、あたしをからかっているのだろうか。
果たしてそれは、楽しいのだろうか。
楽しいのならば、本気でこの人の人間性を疑ってしまう。
だって、さっきまで冷たい先生だったんだもん。
ほんの数分前まで、そうだったのに。
もう彼の裏の顔に慣れてしまったあたしには、今の彼の方がよっぽど可笑しく思える。
「?どうしたんだ、林田」
先生はそう言ってまた、笑った。
この時、ある疑問が確信へと変わった。
先生は、さっき寝室で着替えた時頭でも打ったんだ。
それで、可笑しくなってしまったんだ。
……かわいそうに。


