その言葉のおかげでか、悲しくて切ない気持ちはすぐになくなる。
「……は?」
そう声にしたときには、もう遅く。
先生は、寝室の中に消えて行った。
ていうか、どうして寝室なんだろう?
もしかして、準備するとか言いながら、寝る気じゃ……?
いやぁ、まさか……
あり得ないと思っていたけど、5分しても出てこない先生に、あたしは少し不安になる。
まさか、本当に寝てるんじゃ……?
あたしは、少しずつ寝室に足を近づけていく。
ソファのところまで来たところで、寝室のドアが開いた。
「……あ」
寝室から出てきた人を見て、あたしは気づく。
出てきた人…先生はいつもと同じスーツを着ていて、ボサボサだった髪も整っていた。
ああ、なんだ。
着替えてたのか。
寝室にスーツを置いてたのかな?
あたしはすぐにさっき抱いていた不安を捨てて、笑顔で先生に近づく。
「ビックリしたぁ……何してるかと思ったよ。意味分かんないこと言いながら寝室入って行くから」
話しながら、あたしは先生の前まで来た。
すると先生は、柔らかに微笑んで、
「ごめんな」
と、優しく言った。


